調香師の手帖ー Carnet du Parfumeur

調香師の手帖⑬:甘いまま、大人になる

金木犀という花は、ずいぶん愛想がいい。
なにしろ、遠くからでも匂う。
姿なんか見えなくても、
「あ、金木犀」
と、すぐわかる。

 

これほど自己紹介の上手な花も珍しい。
だから香水にするのは簡単そうに思える。
金木犀の匂いを入れれば、金木犀の香水になる。
ところが、そうでもない。

 

金木犀には、花の匂いと一緒に、桃や杏のような甘さがある。
これを素直に膨らませていくと、たいへん可愛らしい香水になる。
悪くない。

 

でも、今回はそれを作りたかったわけではない。
作りたかったのは、大人の金木犀だった。

 

そこで本物の金木犀のアブソリュートをたっぷり使いながら、ジャスミンサンバックを重ねた。
さらにルイボスの渋み、アイリスを思わせるイオノン、そして少しのレザー。
面白いことに、金木犀から離しているようで、かえって花の甘さが色っぽくなった。

 

桃のような柔らかさも残した。
蜂蜜も、ほんの少し。
甘いものを取り除いて大人にするのではない。
甘いまま、大人にする。
これが案外むずかしい。

 

THE NOTE BARブランドパルファム
▶OSMANTHUS(金木犀)

 

金木犀に年齢があるかどうかは知らない。
でもこれは、たぶん二十歳ではない。